北欧の記憶

北欧の記憶

過日、東京都美術館での企画展「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」を鑑賞してきました。市長としての政策ビジョン形成において、北欧の都市の姿は一つの原風景であり、今でもある種の憧れを抱いています。スウェーデン国立美術館所蔵の作品から選(よ)りすぐられた絵画からは、かつて訪れたスウェーデンの懐かしい空気感が伝わってきました。

 私が初めて市長選に挑戦した当時、小田原では複数の大型開発事業の進め方について、市民と行政との間に意見の隔たりがあり、その解決が重要なテーマとなっていました。開発における適正な合意形成手法も含め、持続可能な都市の在り方を具体に学ぶべく、落選してから2年後の2006年6月、欧州3カ国(デンマーク、スウェーデン、ドイツ)を訪ねたのでした。

 2週間という短い旅程でしたが、貪欲にさまざまな観点から学ぶべく、街を歩き、市民と語り、行政職員を訪ね、その都市の文化に触れました。自然環境と都市との調和、街の美しさ、豊かな食、先駆的なエネルギー政策、手厚い社会保障、考える力を育む教育、市民が学ぶことへの支援、政策を重視する議員選出の仕組み…。歴史やお国柄の違い、合理的に判断する国民性、社会における「公」と「私」のバランス、教育・医療・福祉の無償化を支える税制度など、前提の違いがあり、単純な比較はできませんが「こうすれば、持続可能な社会はできるのだ」という確信が、この旅でつかめたことは大きな収穫でした。

 市長就任後も、折に触れ北欧諸国の動向には関心を持って接してきました。2015年から世界各地で始まったSDGs(持続可能な開発目標)の達成度では、訪問した3カ国は常にトップクラス。最近ご縁を頂いた、小田原出身でデンマーク在住のニールセン北村朋子さんから、そうした国の姿や国民性を可能にしているのが、自立や考える力を重んじる教育であり、誰もが参加するのが当たり前の民主主義的風土にあるということを、改めて教えていただきました。スウェーデンが最近、学校教育の現場で「ICTから本へ」の方針を選択したことは、かの国が何を大事に考えているかを象徴しています。

 日本から見ればその背中はまだ遥(はる)か先を走っている北欧諸国。改めて学び、小田原への応用を考えるべきテーマはたくさんありそうです。

(広報おだわら4月号より)

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